仙波隆綱さんとお会いして漫画版『メタルブラック』の原稿などを見せて頂いて眼福でした!
当方が同人イベント(ゲームレジェンドorコミケ)で委託で取り扱っている『仙波隆綱 自然細密画トランプ』も、いよいよ片手で数えられる在庫数に突入し、まだ未所持の方は是非購入して頂けますと幸いです!

当方が同人イベント(ゲームレジェンドorコミケ)で委託で取り扱っている『仙波隆綱 自然細密画トランプ』も、いよいよ片手で数えられる在庫数に突入し、まだ未所持の方は是非購入して頂けますと幸いです!

ゲーム話がメインではなかったのですが、ペンギンブラザーズ/人鳥流(2000.10)に関してはフリーのゲームデザイナーとして参加したギミック詰め込み過ぎな超仙波色の強い作品であった事が判明!SDガンダム サイコサラマンダーの脅威(1991.09)に関してはアニメのクレジットが引用されただけのようです。

仙波さんと改めて作品について話し感じたのは、サウンド以外は何でも出来ちゃうテクノクラート!ソフトへはイラスト、コンテ、パラパラ漫画で説明しちゃうし、開発工数の管理から出来る出来ないの見切りも超速明解。その突出した個性が最も出たのがガンフロンティアとメタルブラックといえるでしょう。
私はガンフロンティアが特に好きですが、あの強力な画と演出の数々は仙波隆綱という存在自体がビデオゲームの表現領域を大いに拡張させた瞬間でした。それが最初に世に問われた作品であり、スカイガバメントの登場シーンは文字表現では描き切れない美しさでした。これがほぼ90年のゲーム。恐ろしい。

まだゲームでは手垢の付いていなかった『時は未来、地は荒野』(by栗原桃郎)という世界を舞台としたガンフロンティアのOP.『...僕たちは、』のみ渡部恭久氏の作曲で、デザイナーとして参加した小川(少年)貴之氏による「僕達は、待っていたんだ。」が印象的だった。後にダラ外で冒頭がオマージュされた。
ゲームスタートはデスペラードがアップから画面に滑り込むように急降下して、切迫した緊急性も感じさせたが、そもそもこれは敵に奇襲攻撃を仕掛けているという仙波さんの演出意図!後ろ向きの敵機が散開、開幕の戦車が撃ってこないのも、まだ搭乗員が乗っていない(奇襲を受けている)からであった。

ゲーム開始時に敵が撃ってこないのは奇襲を受けているからだった。そして、ここでは本作に誘爆システムがある事が何気なく語られる。OP以外のサウンドを作曲したのが福森秀敏氏で、全曲素晴らしいが中でも屈指の1面『砂漠の山嵐』は悲壮さと吹きすさぶ荒野に硝煙とオイルの臭いすら漂う名曲だった。

スクロールして行くと、ステージが進むと、“そこがどんな所で、何が起こったのか?”というのを背景で明確に伝える手法も仙波さんが完成させたと思っていて(魔界村が嚆矢か)、眼下に墓地が広がり始め、棺桶を模した格納庫には重戦車が収まり、僅かに残った建物にもやはり敵が中に入っているという。

2面は敵が全く出ない、弾を撃たなくて良い、時間があるという“間”が存在することはシューティングでは異例。そして、轟音が先に鳴り始め大型の輸送船団が次々に降下してくるシーンが印象的。ボムで落とすと1万点入るという仕様は大失敗だったとプログラマーのたらばーさんは当方のガンフロ本で語った。
輸送船団が着陸しようとしていた飛行場だろうか、デスペラードの基地への急襲により格納庫から戦車が慌てて飛び出す。フライチェスターも離陸を開始する。離陸寸前で破壊される搭乗員たちに思いを馳せる。給油用のタンクローリーを使って誘爆させろ!格納庫内での破壊、地上物、空中物の残骸も美しい。
隠しフィーチャー満載のガンフロンティアだが、特に2面には状況・進行に直結しているシーンがあり、終盤の森をボンバーで焼くと滝の裏の基地に通じる階段が現れる。そこにはスカイガバメントが格納されており、離陸によって水鳥たちが一斉に飛び立つ。
(たらばーさんに聞く迄は石碑?と思っていた
)

(たらばーさんに聞く迄は石碑?と思っていた

3面は海面。巡洋艦を攻撃し沈めるとボコボコと泡が出つつ沈没していき重油が広がる。今目線で見ても狂っている芸細のこだわりで、しかしながらこの効果によって登場する兵器たちに実在感と生命が吹き込まれたとも言える。海は岩礁と泡立つ白波、ラスタースクロールによる揺らぎも美しかった。




3面ではワイルドリザードが動く人として表された。砂浜に乗り上げる上陸艇から出てくるのがそれで、ボムを放つと全員が伏せをする。マシンに油が入れられているのはタンクローリーと艦で触れたが、それを駆動させる人もまたしっかりと描かれているのである。砂浜近くで敵を倒せば爆発痕に水が溜まる。
中ボスの潜水艦は浮上や潜行がリアルで、それが故に海という存在が際立った。ここで面白いのは潜水艦は早く沈めれば後半再登場しないこと。撃ち逃すと潜行し後半のドックに現れる。記していない物も多々あるのですが、映像表現とゲーム的要素が密接に絡んだ演出が多すぎます。他に類を見ないSTGです。
タンクローリーの誘爆や5面の大渓谷でホンキィタンクーゴールドドラグーン改を誘爆させるのはまだ分かり易いが、「普通に遊んでたら気付かんわ」というのが3面ドックの貨物列車の誘爆。荷が来るタイミングで橋を破壊すると荷も大爆発を起こす。開発に時間がなかったと聞きますが、鬼のこだわりです。

3面ボスのアイアンホエールが隠しギミックで倒せることもガンフロンティアの象徴。ゆっくり動き出す戦艦を勿論通常攻撃でも倒すことは出来る。むしろ、それが本道。しかし実は艦橋の後ろに回り込めて、その後ろにあるダムの防御壁と導水管を破壊すると、ダムを決壊させて水攻めに出来るのだ!(呆れ)
ガンフロンティア4面はマカロニ・ウエスタンな旋律で荒野へ。河口が濁るシーンから始まるが、これも単純なパレットチェンジというだけでなく、ゲームが終盤に入っていくプレイヤーの心象を投影した心理的効果があった様に思う。木材で組まれたダミー戦車は住人がワイルドリザードに抵抗した跡だろうか?
眼下に麦畑が広がる。風がその上を走っていく。ここで鳴る風音こそ始めてゲームの中で風が吹いた瞬間だと思っていて、これをパレットチェンジで表現した発想が圧巻。風は様々な解釈でいい筈だが、前述の河口の濁りが流血のメタファーであったとすれば、それは冷たく厳しいものであったかもしれない。

西部時代を思わせる町も敵に占拠され、その中央には古びれた映画館がたたずむ。そこでは誰も見る人が居なくとも映写機は回り続けていた・・・。上映パターンは6種あり、中にはダライアスPART22もある。(まだⅢも出ていないのに!)
謎の武闘家:ホーリー・チェンが始めて登場したのもこのシーン。
謎の武闘家:ホーリー・チェンが始めて登場したのもこのシーン。

映画館に格納されていたボウガン戦車を生かさず殺さずで銀行に突っ込ませた後に破壊すると出現するのがマックスコイン。インストに記載があるが、コンティニュー時とこの場面しか登場しないレアアイテム。
の時に取ればフルパワーアップ&BOMB MAX1本追加。表か裏か、生か死か、という高い企画性。


砂漠の砂が風に洗れている。1ドットの粒子の明滅は麦畑の穂と同様にパレットチェンジで表現された。無数の宇宙船がうがたれ、これは初期の開拓団が残した遺物なのか、それとも墜落したものなのか。先程の町が西部時代のたたずまいであったのは、初期の移民で作られたコロニーだったのかもしれない。

フライングバイソンの登場前には黒い影が伸びてくる。嵐が迫る前触れか、それとも竜巻の影なのか。竜巻は体力ゲージの役割もあり、これ迄のボスの爆発が全画面を覆う業火であったのに対し静かに沈んでいく姿は仙波さんの意向とメインプログラマー:たらばーさんのこだわりがあった。ガンフロ本必読!

5面は実質的な最終面。ワイルドリザードの大艦隊が遥か眼下を航行していくさ中、デスペラードは太陽を背にしていたに違いない。しかし、5機の戦闘機の索敵に見つかってしまう。号砲が鳴り響き、ここしかない名曲『ユンファオ』のメロディーラインが始まると超高高度、超断崖絶壁な最終決戦が開始する!
崖の山頂には基地があり、左の林をボンバーで焼き払うとモモンガの群れが現れる。これはデザイナーとして参加した小川少年が当時モモンガを飼っていて、「モモンガを出そうぜ!」とチームで盛り上がったため。巣が壊されたから怒って出てきた!という裏設定があるとかないとか。(
でも焼いて稼ぐ
)


地上まで果てる事のない、高さ数キロにも及ぶような大峡谷が始まると、ここにもガンフロンティア(仙波さん)の真骨頂がある。いくつか例を挙げた(記載しなかったものもある)誘爆システムは、この場面は一目瞭然に分かりやすい。
マークの火薬庫を破壊すると崖が崩れ重戦車ごと谷に叩き落せるのだ!

ワイルドリザードの本拠地こそ、開発内で“小川関所”と呼ばれた、デザイナーとして参加した小川少年が敵配置を行った難所である。後述する問題と相まって、ここまで難しくする必要ある?と思えるぐらい難しい。未調整で出荷された本作は、すぐにランク255に到達してしまいノーミスor稼ぐと地獄と化す。

鎖が巻かれた棺に入っているのは重戦車。ここでもプレイヤーに選択を委ねている。鎖を断ち切れば敵が現れる代りに貨物列車が金塊列車に変わる。棺を開けなければ何も褒美は無い。表か裏かの選択はガンフロンティアの根底にあるテーマであり、それがコイントスと重なる世界観だからこそカッコイイのだ。
ついに最終決戦の時!ここからは全空中物が襲い掛かるワイルドリザードにとっても総力戦!実はこの時点で5面のボスである『ガンクルーザ』の姿は見えている。何と岩と砂の下に巨躯が眠っているのだ。一体どれ程の間ここに在ったのか、或いはデスペラードはここに誘導されたのか、そんな想像も楽しい。
岩塊をふっ飛ばし、味方機をなぎ払い、砂塵を巻き上げて出現するガンクルーザ。兵器的にはキャタピラーで移動する車輌だが、最早“艦(ふね)”といった風格を持つ超大型兵器。何らかのエネルギーを充填し塊として放つ主砲を持ち、巨大な砲とリボルバーを複数装備している。ワイルドリザードの依り代。

ガンクルーザに搭載される特殊兵器は『フルメタル カルテット』。同機は攻撃判定の無い自機を捕まえる捕獲機のような敵。4機ではなく上手く回せば5機登場する。『クレージュ』はガンクルーザ専用の艦載機で、ゲームの最後の最後に僅かに登場するザコ敵。その名の通りに真紅の機体がカッコ良かった。

ガンクルーザが大爆発を起こし、これで全ての戦いが終わったと思ったその時、艦橋後方から不気味な一本の線路が伸び、眼下の線路と直結して巨大な棺桶が姿を現した。
このラスボスが巨大な棺桶に入れられ運ばれて行くというのがガンフロンティアのセンスの良さ!カッコ良さ!!キチガイ的メタファー!!!

このラスボスが巨大な棺桶に入れられ運ばれて行くというのがガンフロンティアのセンスの良さ!カッコ良さ!!キチガイ的メタファー!!!
棺から姿を現す『キングリボルバー』。雲を見れば目も眩む遥か高度に居ることが解る。そしてこうした誇張こそ仙波隆綱が幾つかのビデオゲームにタッチし、アニメーションと異なる映像表現として手にした武器ではなかったか。奥で並走はメタブラでも使われる。背景の月は『フェドロ』の卵だったのだ!

ラスボスを眼下に見下ろす時の雲影はフラッシングで表現された。何故、半透明処理ではないのか?実はF2ボードにはその処理能力はない。滝は半透明でしょう?と思うかもしれないが、実はこれは背景とオブジェクトが重なった部分を別のカラーコードにする特殊な仕様があり、滝やロゴはこれを用いたものだ。
極端に言えばネガポジ反転機能。これを豊富な水を湛えた瀑布から上がる水しぶに使った機転が驚愕。そして、この機能が最も印象的に使われたのがメタブラの5ボス、光学迷彩然とした姿は好移植として知られるビングのサターン版でも再現出来なかった。それはF2というボードに依存した処理であったからだ!
ついに最終決戦!巨大な黄金髑髏は惑星グロリアで起こった悲劇を謳ったメタファーか、心象風景か。終盤にシステムがガラリと変わる前例はそれ迄にもあったが、世界観と内容が直結している所にガンフロンティアの神懸かりがある。兵装を切り換えキングリボルバーに挑む。今が最期の時!強大な嵐へ・・。
6発の銃弾を手に嵐の中で一騎打ち!これそこがガンフロンティアの本然。その形はレイフォースのコンヒューマンにも受け継がれた。動きを付けたのは樫野正雄氏との事だが、本作の原案企画であった中村辰男氏を筆頭に開発部員たちには仙波さんへの高いリスペクトがあったという。これもその表れだろう。
仙波隆綱を触媒として、単にタイトーシューティングというだけでなく、日本の、いや世界のビデオゲーム史にとっての映像表現領域を拡張させた縦シューティングがガンフロンティア、横シューティングがメタルブラックであった事は疑い様がない。この次が期待される中、残念ながらそれは示されなかった。
示されない次とはダイノレックスのことではない。何故なら本作はメタルブラックよりも前に存在していたからだ。ダイノレックスに対する仙波さんの所感は幾つかのテキストとしてまとまっているのでここには書かない。きら星のような演出も実際は年度順ではなく、星の瞬きの如く遅れてきた光であった。

仙波隆綱によって示された映像作品としての縦シューの嚆矢ガンフロンティア、その最高到達点に至ったのがレイフォースだった。ダライアスⅡの戦友であり、レイの原案企画であった中村辰男氏に仙波さんは「いつか一緒にシューティングを作ろう」と話していたが、残念ながらその約束は果たされなかった。
聞く限り仙波さんが辞めざるを得なかったことに開発部員はみな一様に悔しがる。退社の日、熊谷分室で製作される新シューティングの相談で中村辰男氏は遥々中央研究所にやってきて仙波さんと懇談の場が設けられた。久々の再会だった。そして、退社後に開発が始まったレイフォースにもその名は刻まれた。
レイフォースに詩的な匂いがするのは、そうした精神性が底流にあり、優れたサウンドによる音響効果が心を伝えたと言えるかもしれない。ガンフロンティアに叙情性が感じられるのはアニメ業界では大ベテランで、幾つかのビデオゲームで新しい映像表現を試みてきた仙波隆綱の最初の集大成であったからだ。
縦シュー:ガンフロンティアの精神を受け継いだ作品がレイフォースやレイストームであれば、横シュー:メタルブラックの魂が受け継がれた作品はダライアス外伝やGダライアスだった。それらの分析はいずれ行いたい。単にタイトーシューというだけでなく、アーケードシューティングの最高峰ばかりである。
それらは総て仙波隆綱が初めて企画・デザイン・プロデューサーとして辣腕を奮ったガンフロンティアから始まった。余談だがEDに2面の曲を当てることはメインプログラマー:堀崇真氏の閃きだが、仙波さんは別のステージの曲を考えていたという。それは今ここでは書けないが、いずれ語れる日も来よう。
